詩人 木ノ内洋二展によせて

十八で小樽に出てきて二十年、町で酒を呑み続けてきた。そんなに多くは無いかも知れないが、様々な人と出会い、ひとときを共にしてきた。共に時を刻んできたと言った方がよいかもしれない。そこで出会った人に支えられて今自分は存在しているし、生活できている。

木ノ内さんと始めて会ったのは、まだ小樽に来て間もない頃の『ですぺら』だ。勝新さながらの容貌で、奥から2番目の席、自分の右隣に座っておられた。非常に音楽に詳しい方で、ルーリードと美空ひばりが好きだと話しておられた事が今も強く印象に残る。『ディセンバー3』の山口さん、『ですぺら』のマスターに続いて知り合った大人は、無頼にして繊細、まさに私が小樽に求めていたイメージそのものだった。

町の喧騒に身を置き、遠くを見つめるその視線は、現在へと届き、我々に響く、ケイショウされる。静かな湖面に立ち上る水蒸気のごとく細密で、それ自体が一個の宇宙であり、人間が創意工夫であぶりだそうとする自然現象の如く深遠だ。 小樽に係りを持ったすべてのアウトロー達にこの追悼展を誇りたい。

■詩人 木ノ内洋二展
 小樽文学館
 2009.3.7(土)-4.5(日)
 9:30-17:00

2009.3.6