とおくへ行けない

ほかの街にいると
もう一人の自分が
部屋で淋しがっている
そんな気がして落ち着かない

仕事でもしているのなら
もう一人の糧になると思えば
少しは気も軽くいるのだが

どこかであそんでいると
寒い部屋でじっとしているもう一人が
淋しがっている気がしてならない
それが誰かの生活する空間ならなおさら

もう一人の自分って誰だ
ただの気のせいか
戸締まりが気にかかるから
それとも精神の病気とは
言えない程度の傾向か

鏡を見たらその顔に誰か
自分以外の特徴が薄っすらと見える
親兄弟とかそんな話ではなくて
表情とか時間とか
忘れてしまったある時とか
そんな類いのこと

会話からこぼれ落ちた言葉
そこに凝縮している視点
いつか何処かで誰かが
同じ事を感じた
星のように無数に
それが起こり続けてきた

2015.11